ページ【夜】

夜になると、小さな黒猫がやって来る。昼間はどこにいるのか何をしているのかわからない。

つややかな漆黒の毛並みに透明の黄色いトパーズをはめ込んだような月の光のような二対の目がまっすぐに私を見つめる。何を訴えているのか鳴きやまない白い乳歯に縁取られた口の中は咲きたてのバラ色。

光の届かない深海の魚にはほぼ色彩をもたないものと極彩色のものがあるらしいが、この夜の黒猫にも似たものを感じる。

黒猫はただ鳴くだけで何も話さない。手がかりの少ない夜の世界でその色に魅せられ、私は言葉を忘れていく…

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