8/26〜9/17 切り絵作家:望月めぐみ展「PCPG」
※併設ギャラリーでの展示です。
monade contemporary|単子現代
会期:2023年8月26日(土)~9月17日(日)|金・土・日 14~19時
*レセプション:8月26日(土)18時~、トークイベント:9月9日(土)19時~
〈ステートメント〉
一枚の紙を彫り形象を表す切り絵と、にじみやぼかしによる表現の間には距離がある。刃物による切り口は鋭く、紙が残された部分と切り抜かれた穴、有と無の境界に曖昧さがないから。しかし、切り絵がにじみやぼかしを生み出せないわけではない。切り絵に光を当てると影が落ちる。光源によってその輪郭はくっきりしたり、ぼんやり見えたりする。揺らぐ影には奥行きと動きがあって美しい。境界はにじむ。
影そのものは実体がないが、それを紙に焼き付ける方法がある。印画紙の上にものを置き、感光させるフォトグラムである。薄く容易に切り抜ける紙は、型紙として主に工芸品の制作工程で多用されてきた。今回自分が行ったことも切り絵を型にして光を紙に染めつけており、意図せず、歴史的に連綿と行われてきたことと重なっている。素材の特性に導かれ制作をしていることにあらためて気がつく。
正倉院には千数百年前の吹絵紙が残る。楮紙の上に型を置き、絵の具を蒔き付けて装飾した素朴で美しい料紙だ。型はおそらく現存しないが、その存在と制作を手掛けた人間の息遣いが伝わってくる。自身の作品も、切り絵ではなくこのフォトグラムが残るかもしれない。わからない。わからないけれど、ひとつ新たな種を撒いたと感じている。
出来上がったフォトグラム作品には、肉眼では視認できない切り絵の紙の繊維が写し出された。技術が浮かび上がらせるリアルが身体による認識を広げ、一枚の紙に奥行きを見る眼を加えた。
― 望月めぐみ
〈展覧会情報〉
monade contemporary | 単子現代では、アーティスト 望月めぐみによるPCPG(papercutting photogram)を開催します。
望月はこれまで、日本に古来伝わる龍や菊、あるいは人魚姫といったおとぎ話に見られる存在をモチーフとして切り絵作品を制作するなかで、時間を超えた出合いや交わりに目を向けてきました。また最近では、無数の幾何学的なパターンのなかから伝説や宗教的なイメージが出現する大作も展開しつつあります。人あるいは風の気配のなかで揺れる紙の形象は、幾重にも折り重なる光と影の彫刻となって荘厳に輝きをまとうかのようです。
近年、望月は切り絵の気配を構成するにじみやぼかしなどの表現に着目し、感光紙にものを置いて撮影するフォトグラムという写真技法に親しんできました。本展では、望月にとってはじめての試みとなるフォトグラムと切り絵を合わせたPCPG(papercutting photogram)という独自の技法によって制作された作品群を紹介します。和紙というメディアそのものを彫刻し形象を出現させる切り絵という技法が、ものを感光さることによって描画する写真の技法と出合うとき、光と影はどのように交わり、かたちとなるのでしょうか。和紙の原料となる楮、花鳥風月や霊獣、あるいは日本を象徴する菊といったモチーフとともに立ち現れる、イメージ-形象の創生にご参加ください。
〈アーティスト〉
望月めぐみ
紙をナイフで刻み生まれるシャープでなめらかな曲線と、透ける造形美を追求する。数メートルに及ぶ一枚紙を手作業で刻んだ大型作品も制作。作品を通し、人間の手の持つ可能性を伝える。主なモチーフは神話、古典文学など。伝統文化とのコラボレーション多数。近年の活動に、個展「祈り咲く空」(富士川・切り絵の森美術館、山梨、2023)、Schweizerische Scherenschnitt Ausstellung、Hans Erni Museum、Switzerland、2022)、個展「交 CROSS」(祇をん小西、京都、2021)などがある。
https://www.mochime.com/