7/13 – 7/21 コア・ファム個展「溶けたかたちが見かけに瑕(きず)をつくって」

〜カフェみずうみ併設ギャラリーでの展示です〜

monade contemporary|単子現代
2024年7月13日(土)~21日(日)|木・金・土・日 14~19時

アーティストトーク:2024年7月13日(土)18~19時 コア・ファム(アーティスト)
オープニング・レセプション:2024年7月13日(土)19~21時

トークイベント:2024年7月14日(日)14~15時 ※ワンドリンク・オーダー
「ベトナムから辿るキュレーションの技術と倫理」 ゲスト:遠藤水城(キュレーター)

〈ステートメント〉
大いなる幸福をよく想わせる「楽園」という言葉について、宗教的な意味合いを越えたところで考察してみよう。「ピュア・イマジネーション(純粋な想像力)」というジーン・ワイルダーの歌からインスピレーションを得て、心の状態としての楽園という考えが浮かんでくる。この抽象的な定義が示唆しているのは、人は楽園として認識するだけで楽園を経験できるということだ。

「楽園を眺めたければ
ただ見回して眺めよう
したいことは何でもしよう
世界を変えたい?
そこには何もない」

この歌詞は、世界を楽園として眺めるようにし、現実を定義することにおける行為者の感覚を示している。しかし、このテクストは楽園のような状態を理想化することで生の厳しい現実に対する感覚が麻痺してしまうのではないかという疑問を投げかけ、カール・マルクスによる宗教は抑圧された者のアヘンであるとする批判とも共鳴している。

「溶けたかたちが見かけに瑕をつくって」には、パフォーマティブな要素を知覚できる。化学反応はバスボムと水が合わさるときに起こる。このかたち、入浴という行為で広く使われる一般的なバスボムは、楽園の有象無象の側面を表象している。溶解するバスボムのイメージは、水と相互作用を起こしたときにこそ楽園の本質をとらえる。

かたちが溶けるなかで見かけに瑕が残り、楽園のような心の状態を示す証となる。ワニス層が瑕を保存するために塗られ、楽園という刹那的なひとときにすがろうとする労苦の象徴となる。シズル感、泡立ち、美しき芳香といった感覚的な経験は、もとのかたちが溶けてしまう前に理解しようとする試みと対比をなしながら、楽園という考えをとりまく複雑さをめぐり魅力的な探査をなしている。

このパラドックスにより、私たちの精神性が日々の行動にどのような影響を与えているかを探りたい。探索を深めて私たちの心にある楽園を定義し、到達し、思考の内とともに目の前にある外的な「楽園」との関係性に目を凝らしてみよう。

― コア・ファム(Koa Pham)

〈展覧会情報〉
monade contemporary | 単子現代では、Koa Pham(コア・ファム)による個展「溶けたかたちが見かけに瑕をつくって | A melted form creates stains on surface」を開催します。

Koa Phamはこれまで、人とオブジェクトの関係が空間において変化するプロセスをアート作品として表現してきました。ドローイング、彫刻、パフォーマンス、デザインなど、さまざまな媒体にかかわりながら、オブジェクトがどのように人を媒介して、その意思決定に影響を与えるかに重点を置いて、オブジェクト、人、空間の関係について考察しています。

本展では、Koa Phamはカラフルなバスボムを溶かして制作した平面作品により、楽園のように表象された政治体制の両義性を表現しようとします。静かな多幸感に包まれたにおい立つような極彩色の入浴剤は、それぞれの断片が溶けて混ざり合うプロセスにおいて、どこかいびつなかたちを出現させます。

資本主義と社会主義、あるいは自由と平等が表象する楽園への権利を求める闘争の歴史としてベトナムという国家の歴史を振り返ると、平面を占める色彩が混融するプロセスはその表層の内奥から粒子がせめぎ合う力の干渉域を浮かび上がらせ、人々の感情や欲望、あるいは心情のせめぎ合いを予感させる瑕の領域をつくります。

楽園という平静な快楽が占める状態を生きるとき、人は自身の心情とどのように向き合い、周囲の状況とかかわることになるのでしょうか。極彩色のバスボムの断片群が混融する流れのなかで、心情の反映をなす粒子の輝きと戯れにご参加ください。

〈アーティスト〉
コア・ファム(Koa Pham) https://koaph.am/
1993年、ベトナム・ホーチミン市生まれ、ロンドン在住、ベトナム、ロンドンを拠点に活動。ドローイング、彫刻、パフォーマンス、デザインなど、さまざまな媒体にかかわりながら制作をしている。作品では、オブジェ、人間、空間の関係を特に検討しながら、どのようにオブジェクトが人間に主体性を与え、意思決定に影響を与えるかについて考察を深めている。

〈トークイベント・ゲスト〉
遠藤水城(キュレーター)
1975年札幌生まれ。東山アーティスツ・プレイスメント・サービス(HAPS)エグゼクティブ・ディレクター、国際美術評論家連盟会員。