「ものの様態」展によせて
6月22日〜7月7日、併設ギャラリー単子現代にて、Koa Pham/池田剛介/Chen Yi-Wen 展「ものの様態 | state of matter」が開催されました。
https://monadecontemporary.art-phil.com/?p=612
これは展示の対面でカフェをしていて、あったことや色々思ったことを綴った手記(散文)です…
梅雨に入りオープニングから大雨で、翌日から雨の音が響くなか展示作品を見守っていた。
化学物質でいっぱいのカラフルな世界が滲んで、壁の隙間から人工鉱物がわいてきて、静かなギャラリーの窓の外では取りとめのない会話やざわめきのように雨が降っては流れて、窓際にテープで留めた水は(少し唐突な)句読点のようにも見えた。
展示アーティストの池田さんが作った本の中の文字は作品の鉱物と同じ色で、本に印字される言葉・文字・文章は、鉱物と似て時間をかけて結晶するものなのかもしれない。言葉がモノになる時間がかかる。
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展示に合わせた言葉を選んで作る「ことばを食べるかんじクッキー」今回は「物」mono
物という言葉がモノになって
The word “thing” became a thing.
かんじクッキーは言葉を物質化するため、あえて光や風など形のないものや動詞とか形容詞が基本で、形のあるものの字をあまり作らないけど、今回は史上もっともものものしい感じ。
展示アーティストのYi-Wenさんがこれを見て、沢山の指みたい!と言った。
かんじクッキーは土の中(記憶の地層)から掘り出した言葉の形をした化石という体のもので、人間の身よりは固いけれど、人間の体もまた土でできていて土に還ると言われる。
土の中の言葉が体の一部になりまた土に還る。言葉も人の体も浮世のもので、同じようなものを交換しながらそれぞれの境界を揺るがせながらずっと変わっていく。
展示期間中の池田さんのアーティストトークの中で、人間の骨や歯は鉱物で、人が死んで有機物が土に溶けてもそれらは残るという話があった。
(ケーキの中に小さな陶器の人形や物を仕込むフランスの伝統的なお菓子「ガレットデロワ」というものがあるが、この流れで陶器の骨や歯が入ったかんじクッキーをこれから作ってみたいなと思った。
文字の骨格とはどんな形だろう?象形文字?)
あらゆる有機物が洗われた浄土では、私たちの骨や歯と今では人それぞれのその人らしい言葉・言語は残せるのかもしれない。
しゃべるお墓のことを思い出した。
石のお墓がしゃべる。たぶんそれは生前の声を録音・再生しただけのものだけど…ずっと前、はじめて駅でこのお墓の少しポップな広告をみた時から、「死」に対してそれまで植え付けられていたネガティブなイメージだけではなくなった。死んでも世界は続く。
浄土から楽園へパラダイスはシフト。
「溶けたかたちが見かけに瑕(きず)を作って」Koa Pham 個展へ
https://monadecontemporary.artphil.com/?p=656