風景を越える水平線

2024年6月2日〜6月16日、村田のぞみ/リー・ハオ「風景を越えて」展(@併設ギャラリー単子現代)
https://monadecontemporary.art-phil.com/?p=570
により、みずうみにもー水平線ーが現れました。この展示はもう終わりましたが、見えない水平線ー肩から頭が出て話ができるくらいの水深ーはずっと残っています。

展示の構成は、ベトナム人リー・ハオさんによる戦争時にボートピープルたちが逃げ出した海の抽象画と、それを受けた村田のぞみさんによる沢山並んだグラスの水の上にひとつづつ浮いている小さな針金の船たちのインスタレーション。グラスそれぞれの水面の高さを揃えて、水平線が浮かび上がる。

遠くの昔の青い風景と、近くの今の透明な景色。曖昧にされた歴史から、透明な日常へ。

ー過去を辿るー今に浸りー未来を想像するー

みんながそれぞれ小さな船に乗って生活する日常を想像してみる。ミニマムで集合的な世界。途中で海水を飲料化する装置の仕事をしているという方が展示を見に来られて、想像が少しリアルになった。
そう言えばこの場所は船の中のようだ。

グラスに浮かぶ針金でできた身のない船は生きものの骨のようでもあり、あらゆる有機物が沈んで、形骸だけが浮かび上がってきたもののようにも見えた。風に吹かれて小さな海を漂う小さな舟たち。それは悲しいようでどこか晴れやかな風景で…

昔からあるときどき思い出す答えの出ない哲学的な問いをまた思い出した。
「どこまでも透明というのは想像できない。」
そこにはどうしても一番後ろに何か色を必要とする。
景色から色が飛んで風景になるのか。でも一度色のついた世界を透明にするのは難しくて、、遠目には青く見える海が近くで見ると透明だというのはまた逆説的で、、

終わらない水平線の上に問いは浮かんでどこまでも彷徨うまま「風景を越えて」展は終わって、水のグラスたちと入れ替わるように透明なテープの器に水を注いだ Chen Yi-Wen さんの作品 “Tape the Water” が現れた。

とりとめもない水を、一旦テープで留める。
そうすると雨が降り始めて「ものの様態」展へ続くー